USLLCを持つ在日アメリカ人の税務の取扱い

2025.04.14  [Mon]

大阪市都島区に事務所を構える、相続・国際税務を専門とする村田綜合税務会計事務所です。
今回は、最近相談を受けることの多い、アメリカ人(日本居住者)が米国にUSLLCを保有しているケースをご紹介いたします。

1.事例

私は日本の永住者に該当するアメリカ人で、米国でLLCを保有しています。仕事はオンラインでも可能なため、日本に住みながら、インターネットを通して一人で行っています。米国のLLCはパス・スルー課税を選択しているため、法人としては申告せず、個人として申告をしています。
この場合、日本の税務上の取扱いはどうなりますか。

2.日本の税務上の取扱い

日本においては、たとえ米国でパス・スルー課税を選択していたとしても、USLLCは法人として取り扱われることとなります。その上で、USLLCが一人会社であり、業務も全て日本で行っているのであれば、恒久的施設(PE)とみなされ、日本での法人税申告を行うべきと考えます。

①米国LLCに対する日本国税庁の見解

LLC法に準拠して設立された米国LLCについては、以下のことを踏まえると、原則的には日本の税務上外国法人に該当するものとされています。

・LLCは、商行為をなす目的で米国の各州のLLC法に準拠して設立された事業体であること
・事業体の設立に伴いその商号等の登録(登記)等が行われること
・事業体自らが訴訟の当事者等になれるといった法的主体となることが認められていること
・統一LLC法においては、「LLCは構成員と別個の法的主体である」「LLCは事業活動を行うための必要かつ十分な、個人と同等の権利能力を有する」と規定されていること

②租税条約上の恒久的施設(PE)の定義について

日米租税条約第5条において、恒久的施設とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部または一部を行っている場所をいうとされています。
具体的には、事業の管理の場所、支店、事務所、工場、作業場、鉱山等の天然資源を採取する場所、契約を締結する権限を有する代理人などが該当します。
本事例の場合ですと、代表者が日本で業務を行っていますので、事業の管理の場所が日本にある、事務所は日本にあるものとして、恒久的施設であると認定される可能性があります。

③外国法人としての法人税申告

恒久的施設と認定された場合、USLLCは日本において、恒久的施設に帰属する所得について法人税申告をする義務が生じます。この場合、一人代表が日本で全ての業務を行っている場合は、USLLCの全所得は恒久的施設に帰属するものとして、そのすべての所得について法人税申告義務が生じることになります。

 

今回は、最近ご相談の多い、海外に法人を持つ代表者が日本で業務を行う場合の事例を取り上げました。
本稿には記載をしていない、細かな論点もございますので、もしご相談のある方は「お問い合わせフォーム」からお問い合わせ下さい。

 

 

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