日本居住者である外国籍の方が米軍からの退役年金を受給している場合

2025.01.22  [Wed]

大阪市都島区に事務所を構える、相続・国際税務を専門とする村田綜合税務会計事務所です。
外国籍を持つ日本居住者の中には、過去に米軍に勤務しておられ、退役後に退役年金を受給されていることがございます。この場合の課税関係について記載しようと思います。

1.日本税務上の取扱い

① 「外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度」に基づいて支給される年金は、「国外源泉所得」とされています(所得税法95条④十ロ)。

② 退役年金を受給される方が、日本居住者(永住者)に該当する場合は、国外源泉所得も含めたすべての所得が課税対象となるため、日本での課税対象となります。
仮に、日本居住者(非永住者)に該当する場合は、国外から日本への送金がある場合に課税対象となります。

2.日米租税条約の取扱い

日米租税条約18条②(a)では、「一方の締約国又は一方の締約国の地方政府若しくは地方公共団体に対し提供される役務につき、(中略)支払われる退職年金その他のこれに類する報酬(社会保障に関する法令又はこれに類する法令の規定により合衆国によって支払われる給付を除く。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる」とされています。

つまり、かつて米軍に勤務されており、退役後に米軍より支給される年金については、米国でのみ課税されることとなるため、日本では課税されません。

税務の取扱いでは、国内法よりも租税条約が優先で適用されるため、本件のケースでは租税条約に基づき、日本では課税されず、米国でのみ課税されることになります。

3.代わりに日本人の奥様が退役年金を受け取る場合はどうなるか?

米軍で勤務されていたご主人がお亡くなりになり、代わりに日本人である奥様(日本居住)が受給されることがあります。
日米租税条約18条②(b)では「他方の締約国の居住者であり、かつ、当該他方の締約国の国民である場合には、当該退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課する」とされているため、この場合は日本で課税されることになります。

 

今回は問い合わせを頂くことが多い、米軍に関する年金の取扱いについてまとめました。
国内法や租税条約での取り扱いなど、複雑であるため、お困りのことがございましたらお問い合わせフォームからご連絡下さい。

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