2025年度(令和7年度)税制改正大綱の発表

2024.12.26  [Thu]

大阪市都島区に事務所を構えます、相続・国際税務に強い村田綜合税務会計事務所です。

12月20日に与党より2025年度(令和7年度)税制改正大綱が発表されました。今回は、主な改正内容の概要をお伝えするとともに、それぞれの改正に関する考察も記載していきたいと思います。

1.所得税

(1)103万円の壁の引き上げ(適用時期:2025年(令和7年)以降の所得税)

・基礎控除については改正前の48万円から58万円に引き上げられます(合計所得金額が2,350万円以下の場合)
・給与所得控除については、改正前の55万円から65万円に引き上げられます
   つまり、基礎控除及び給与所得控除の拡大を合わせて、いわゆる103万円の壁が123万円へ拡充されます

・配偶者控除や扶養控除の対象となる扶養親族の合計所得金額要件が、改正前の48万円以下から55万円以下に引き上げられます
特定親族特別控除(仮称)の制度が創設され、合計所得金額が58万円超123万円以下において段階的に控除を受けることが出来るようになります

(2)生命保険料控除の拡充(適用時期:2025年(令和7年)以降の所得税)

23歳未満の扶養親族がいる場合、生命保険料控除の額が以下の様に引き上げられます。

<改正前>  

新生命保険料 控除額
20,000円以下 新生命保険料の全額
20,000円超40,000円以下 新生命保険料×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下 新生命保険料×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円


<改正後>

新生命保険料 控除額
30,000円以下 新生命保険料の全額
30,000円超60,000円以下 新生命保険料×1/2+15,000円
60,000円超120,000円以下 新生命保険料×1/4+30,000円
120,000円超 一律60,000円


(3)住宅ローン控除(子育て世帯等に対する控除の拡充等)

特例対象個人(夫婦のいずれかが40歳未満の者または19歳未満の扶養親族を有する者)が、認定住宅等の新築等をして2025年(令和7年)中に入居した場合の控除対象借入限度額を上乗せする措置の1年延長。

控除対象借入限度額(新築かつ2025年(令和7年)入居時期の場合)

  特例対象個人以外 特例対象個人
認定住宅 4,500万円 5,000万円
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円 4,500万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円 4,000万円
一般住宅 2,000万円 2,000万円


(4)子育て対応改修工事に係る住宅リフォーム税制の延長

既存住宅に係る子育て対応改修工事をした場合の所得税の特別控除(工事限度額250万円)について、適用期限を2025年(令和7年)12月31日まで1年間延長する。

2.資産課税

(1)事業承継税制における役員就任要件・事業従事要件の緩和(贈与税)(適用時期:2025年(令和7年)1月1日以降の贈与)

法人版及び個人版事業承継税制(贈与税)における後継者要件が以下のように緩和されます。

 

後継者要件 改正前 改正後
役員就任要件(法人版:特例措置) 贈与の日まで3年以上継続して役員等であること 贈与の直前において役員等であること
事業従事要件(個人版) 贈与の日まで3年以上継続して事業等に従事していたこと 贈与の直前において事業等に従事していたこと


3.法人課税

(1)中小企業者等に対する軽減税率の延長

中小企業等の所得金額のうち、年800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率15%(本則:19%)の適用時期が「2025年(令和7年)3月31日までに開始する事業年度」から「2027年(令和9年)3月31日までに開始する事業年度」まで2年延長される。
ただし、

①所得の金額が年10億円を超える事業年度については、軽減税率を17%に引き上げる。
②グループ通算制度の適用を受けている法人を適用除外とする

(2)中小企業投資促進税制の延長(適用時期:2027年(令和9年)3月31日までの間に事業の用に供した資産)

中小企業投資促進税制について、適用期限を2年延長し、2027年(令和9年)3月31日までに事業の用に供した資産に適用される。

(3)新リース会計基準に関連する税制改正(適用時期:2027年4月1日以降開始する連結会計年度)

企業会計基準委員会が令和6年9月13日に、借り手側におけるオペレーティング・リース取引について、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を廃止するなどを主な改正点とする新リース会計基準を公表した。
税務上の取扱いは変わらないことから、会計上の処理との乖離が生じるため、以下の対応が必要となる。

・新リース会計基準ではオペレーティング・リース取引について「使用権資産」「リース負債」が計上され、「使用権資産」は減価償却費により費用配分を行い、「リース負債」は利息相当額を配分する。
・一方、法人税法上は賃貸借取引のままであることから、会計上との乖離について申告調整が必要となる。

4. 消費課税

(1)外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し(適用時期:2026年(令和8年)11月1日以降の免税対象物品の譲渡等)
・免税店が外国人旅行者から消費税相当額を預かり、出国時に持ち出しが確認された場合に旅行者に消費税相当額を返金する仕組み(リファンド方式)とする。
・消耗品について、同日一店舗当たりの免税対象となる購入限度額(50万円)及び特殊包装を廃止する。
・「通常生活の用に供するもの」との免税対象物品の要件を廃止する。
・金地金等は免税販売の対象外として個別に定める。
・税抜100万円以上の免税対象物品について、商品を特定するための情報(シリアルナンバー等)を国税庁に提供する
・2025年(令和7年)3月31日をもって免税対象物品を免税点以外から海外に配送する「別送」を認める取り扱いを廃止する。ただし免税店から直接海外に配送する「直送制度」の仕組みは存置される

5.国際課税

(1)外国子会社合算税制等の見直し

①合算時期の変更
外国関係会社の事業年度終了日翌日から4か月(改正前:2か月)を経過する日を含む親会社の事業年度に合算することとなります。

②添付・保存書類の簡素化
従来添付が求められていた「株主資本等変動計算書及び損益金処分計算書」「貸借対照表・損益計算書の勘定科目内訳明細書」は不要となります。

6.その他

(1)防衛特別法人税(仮称)の創設
法人の各事業年度の基準法人税額について、下記の計算式に基づき当分の間、防衛特別法人税が課税される。

基準法人税 △基礎控除額(年500万円) ×4% △税額控除 =防衛特別法人税

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