米国の遺族年金を日本で受給した場合の所得税及び相続税の取扱い

2024.11.25  [Mon]

大阪市に事務所を構えます、相続・国際税務を専門とする村田綜合税務会計事務所です。
本日は、良く質問を受けることの多い、米国の遺族年金を日本で受給した場合の取扱いについてまとめます。

1.遺族年金の基本的な課税の考え方

日本の遺族年金を受給する場合、国民年金法や厚生年金保険法、国家公務員共済組合法等に基づいて遺族の方に支給される遺族年金や遺族恩給は、所得税は課税されません。
こちらは、各法律の中において、「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない」とされていることによります。
例えば、厚生年金保険法では、41条にその定めがあります。

2.米国の遺族年金を日本で受給した場合

先ほどの1で述べました、厚生年金保険法等の法律は、海外の制度に基づく遺族年金はカバーしていません。
一方で、所得税法において、遺族が受ける年金については、勤務に基づいて支給されるものは所得税法上非課税とされています(所法9三ロ)。
こちらの年金については、外国の年金も含まれることとされているため(所法35③三、所令82の2②一、同令72③九)、「勤務に基づいて」支給される米国の遺族年金については、所得税上非課税となり、日本での確定申告は不要となります。

ただし、勤務に基づかない遺族年金については非課税の範囲からは外れるため、年金の内容については吟味することが必要となるでしょう。

 

3.日本の相続税における取扱い

「米国で過去に勤務されていたご主人の遺族年金を受給し始めたのだが、これに相続税はかかるのか?」

こうした質問を最近良く受けるようになりました。
この場合、ご相談は以下のパターンとなることが多いです。

①被相続人及び相続人ともに日本に居住しており、被相続人がお亡くなりになられた後、長期間(5年以上)経過したのちに遺族年金の受給が開始したケース

米国の場合、相続人が一定年齢に達することが遺族年金の受給要件となる場合があり、ご相続から長期間経過したのちに遺族年金の支給が始まるケースが少なくありません。
この場合、相続税の更正期間(原則、相続税の申告期限から5年)を過ぎているため、特にご心配頂く必要はございません。

②被相続人及び相続人ともに日本に居住しており、被相続人がお亡くなりになられた日~5年以内に遺族年金の受給を開始したケース

この場合も、ご相続の開始時点において、遺族年金の支給の有無は未確定であるため、相続税の対象とはなりません。

③被相続人及び相続人ともに日本に居住しており、被相続人がお亡くなりになられると同時に遺族年金の受給を開始したケース

この場合、相続税法第3条①六号に規定する「契約に基づかない定期金に関する権利」に該当するため、遺族年金の受給権が相続税の課税対象となります。

④遺族年金の受給を開始した時点で、被相続人及び相続人ともに10年以上海外に居住していたケース

この場合、相続税の納税義務者に該当しません。

以上、米国の遺族年金を日本で受給した場合の所得税及び相続税の取扱いについて、記載をしました。米国の、とはありますが、取り扱いは各国ともに同一となります。
こうした年金の取扱いも含め、海外から得る所得についてご相談や申告をご希望される方は、お問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。

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