日本居住者が受け取る米国の年金についての取扱い

2024.08.27  [Tue]

大阪市都島区に事務所を構える、相続・国際税務を専門とする村田綜合税務会計事務所です。
今回は、日本に居住しながらも、米国の年金を受け取った場合の税金の取扱いについて解説します。

日本で生まれたものの、若いころに米国に移り住み、長年居住された方で、例えば老後は故郷である日本で生活したい、といった事情から、日本に帰国された後の、米国からの年金受給に関する相談を頂くことがよくあります。

1. 納税義務者の区分

ご相談を頂く方は、日本に永久帰国される方が多いので、多くの方は、日本の所得税法上「居住者」という区分に該当すると思われます。
居住者とは、日本国内に住所があるかまたは現在まで引き続いて1年以上居所がある個人をいいます。
なお、居住者は、「非永住者以外の居住者」と「非永住者」に分かれます。

(1)非永住者以外の居住者

非永住者以外の居住者は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。一般的にはほとんどこのケースに該当します。

(2)非永住者

非永住者とは、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。

非永住者は、所得税法に規定する国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得と、国外源泉所得で日本国内において支払われ、または日本国内に送金されたものに対して課税されます。

2. 国内源泉所得に該当するかどうか

①日本の所得税法

非永住者以外の居住者については、全世界の所得に対して課税されます。
しかし、非永住者については、「国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得と、国外源泉所得で日本国内において支払われ、または日本国内に送金されたものに対して課税」することとされていますので、国内源泉所得に該当するかどうかの判断が重要となります。

この点において、所得税法上は「公的年金、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの」が国内源泉所得に該当することとされています。しかし、租税条約で別の定めがある場合は、租税条約の定めに従うこととされていますので、結局のところは、日米租税条約の内容を確認する必要がございます。

②租税条約上の取扱い

日米租税条約での取り扱いは年金の種類によって変わることになります。

・例えば、米国の公的年金やIRA(Individual Retirement Account)、401kといった私的年金を日本に住みながら受け取る場合、日米租税条約17条①に照らし、居住国である日本で課税することとされていますので、国内源泉所得となります。

日米租税条約 第十七条
次条2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が受益者である退職年金その他これに類する報酬(社会保障制度に基づく給付を含む。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

したがって、非永住者以外の居住者、非永住者の区分に関わらず、確定申告書上は雑所得(公的年金等)として、申告することとなります。

・一方で、例えば米軍にかつて所属されていたような方は、軍人としての年金を受給するようなケースや、市役所に勤務されていたような方は、当該市からの年金を受給する場合もあります。

その場合は、日米租税条約18条②(a)により、米国にて課税されることになります。米国で「のみ」課税されることになりますので、非永住者以外の居住者、非永住者の区分に関わらず、日本では課税されないこととなります。よって、日本での確定申告は不要となります。
先ほどの①のケースとは、税金の取扱いが変わりますので、注意が必要です。

日米租税条約 第十八条

(a) 一方の締約国は、他方の締約国若しくは地方公共団体に対し提供される公務につき、個人に対し、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方公共団体により若しくは当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方公共団体から支払われる退職年金その他これに類する報酬(社会保障に関する法律の合意に基づき支払われる給付を除く。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 

日米にまたがる年金等の所得の課税関係は複雑となり、個々の状況によっても税金上の取扱いが変わって参ります。
また、上記は日本での取り扱いをメインで記載させて頂きましたが、米国上の取扱いも検討をする必要があり、二国間にまたがって対応をすることが必要となります。

村田綜合税務会計事務所では、このような国際税務に関わるご相談を承っておりますので、ご相談のある方は、お問い合わせフォームからお問い合わせ頂ければと存じます。

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