相続後に被相続人の預金を引き出しても問題ないか?

2024.08.16  [Fri]

大阪市都島区に事務所を構える、相続・国際税務を専門とする村田綜合税務会計事務所です。
相続税申告をご依頼くださるお客様から、以下のような質問をよく受けます。

①相続後に被相続人の預金を引き出しても問題ないか?

②相続税申告前に、被相続人の預金を解約して相続人名義の口座に移して問題ないか?

③相続税申告前に、不動産の相続登記を行っても問題ないか?

いずれも、相続税申告の観点からは、直ちに問題になるものではありません。
ただし、それぞれ以下の留意点があります。

1. ①及び②の場合

相続税申告書を作成する上では、相続があった時の預金残高が課税対象となりますので、適切にその時の残高を申告書に記載頂ければ、税務上は問題ありません。
懸念すべきは、税金よりも、遺産分割をめぐってもめごと(=争族)に発展するケースがあるということです。
②は、相続人の全員の同意がないと、被相続人名義の預金は解約できないので、問題になることは多くはないでしょう。
ただし、①の場合は、

・被相続人と同居していた相続人が、他の相続人には内緒で預金を引き出したケース

・被相続人と同居していた相続人が、かねてから、被相続人の預金を使いこんでいたケース

がかなりあります。その場合、過去の預金の使途をめぐって、他の相続人と争いになるケースが多いのです。

ですので、「問題はないか?」と聞かれた場合は、「他の相続人との同意があり、もめなければ問題はない」と返答するようにしています。

2. ③の場合

③の場合も、相続税上、すぐに問題になることはありません。

しかし、土地の評価を減額することの出来る特例(=「小規模宅地等の評価減」といいます)を受けられる場合は、話が変わってきます。
例えば、被相続人が居住していたご自宅の場合、小規模宅地等の評価減を受けられるのは、

・配偶者
・同居親族
・持家なしの別居親族(配偶者も同居親族もいない場合)

と決められています。
ですので、不動産を名義変更で相続される場合に、こうした特例を受けることが出来るのかを考慮することが、重要となります。

万が一、一度名義変更をした場合に再度の名義変更を行う場合、贈与税が課税される対象となりますので、注意が必要です。

3. 実務ではいつ遺産分割を行うのがよいか?

実務上、遺産分割は、遺産分割内容及び相続税額がかたまった、最終段階で行うことが一般的です。
つまり、お客様から資料をお預かりし、いくつかの遺産分割パターンに基づいて相続税額の試算を行い、遺産分割内容が固まった後で、税務署に提出する相続税申告書の作成と同時並行で遺産分割を行うのが、実務上はベターな形となります。

今回は、相続税申告に関連して、よくある質問に対する見解を解説いたしました。
ご家族の諸事情に応じて、問題は様々かと思いますので、もし迷われることがございましたら、お問い合わせフォームからお問い合わせ頂ければと思います。

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