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輸出に係る消費税の取扱い
大阪市都島区に事務所を構える、相続と国際税務に強い村田綜合税務会計事務所です。今回は、商品を海外に向けて輸出されている事業者様を念頭に、輸出に係る消費税の課税関係について解説を行います。消費税の輸出は、消費税の免税手続きが絡んでくるため、質問を受けることの多いトピックの一つとなります。
1. 概要
消費税は諸外国の付加価値税(VAT)や売上税といわれる税と同様の仕組みをとっており、これらの税については、それぞれの消費地で課税をすることが国際慣行となっている。我が国の消費税においても、この慣行に従って、輸出して外国で消費されるものや国際通信、国際輸送などの取引については、消費税が免除される(消法7)。
2. 輸出免税の適用範囲
輸出免税の対象範囲は以下の表の通りだが、本稿では有形資産の輸出であることを前提に記載をする(消基通7-2-1)。
対象資産等 |
輸出免税が適用になる取引の内容 |
有形資産 |
本邦からの輸出(関税法第2①二)として行われる資産の譲渡又は貸付け |
無形資産 |
非居住者に対する消費税法施行令第6条第1項第4号から第8号まで(無形固定資産等の所在場所)に掲げる無形固定資産等の譲渡又は貸付け |
役務提供 |
非居住者に対する役務の提供で、国内において直接便益を享受するもの以外のもの |
国際輸送 |
国内及び国外にわたって行われる旅客又は貨物の輸送 |
国際通信 |
国内と国外との間の通信又は郵便若しくは信書便 |
外航船舶関係 |
外航船舶等の譲渡又は貸付けで船舶運航事業者等に対するもの |
外航船舶等の修理で船舶運航事業者等の求めに応じて行われるもの |
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専ら国内と国外又は国外と国外との間の貨物輸送に使われるコンテナーの譲渡、貸付けで船舶運航事業者等に対するもの又は当該コンテナーの修理で船舶運航事業者等の求めに応じて行われるもの |
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外航船舶等の水先、誘導、その他入出港若しくは離着陸の補助又は入出港、離着陸、停泊若しくは駐機のための施設の提供に係る役務の提供等で船舶運航事業者等に対するもの |
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外国貨物関係 |
外国貨物の譲渡又は貸付け |
外国貨物の荷役、運送、保管、検数又は鑑定等の役務の提供 |
3. 輸出免税等の適用要件
輸出免税が適用されるのは、次の要件を満たした資産の譲渡等に限られる(消法7①、消基通7-1-1)。
(1) 課税事業者によって行われるものであること
(2) 国内において行われるものであること
(3) 課税資産の譲渡等に該当するものであること
(4) 輸出取引及び輸出類似取引に該当するものであること
(5) 輸出取引及び輸出類似取引に該当するものであることにつき、証明がなされたものであること
4. 「輸出」とは何か
消費税法における「輸出」は、その考え方において関税法を基本としており、関税法は、輸出を「内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう」と定義している(関税法2①二)。消費税法ではこの関税法を輸出の定義として参照している(消基通7-2-1 (1))。
また、関税法は、「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、……必要な事項を税関長に申告し、……その許可を受けなければならない」(関税法67)としている。したがって、「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡」(消法7①一)を言い換えれば、「関税法の輸出の手続きを踏むことが資産の引渡しとして行われる資産の譲渡」となる。
5. インボイス制度との関係
輸出免税が適用される取引である限り、インボイスを交付する義務はない(消法57の4①)。
6. 輸出証明書等の保存
輸出業を営む法人もしくは個人事業者から、輸出免税の適用を受けるために必要な書類の質問を頂くことがよくある。消費税法における輸出免税の適用を受けるためには、輸出したことの証明が必須となる(消法7②)。不正な消費税還付を防止するために、税務調査においても、輸出許可証等の輸出をしたことの証明の確認が、年々増えている。証明そのものは、以下のような書類等の保存により行い、納税地等に7年間保存する必要がある(消規5①)。
区分 |
輸出証明書等 |
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輸出として行われる資産の譲渡又は貸付けである場合 |
郵便による輸出以外の場合 |
税関長から交付を受ける輸出の許可もしくは積込みの承認があったことを証する書類で以下の事項が記載されているもの (1) 輸出者の名称と住所等 (2) 輸出の年月日 (3) 品名と品名ごとの数量・価額 (4) 仕向地 |
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郵便による輸出をした場合 |
その輸出した資産の価額が20万円を超える場合 |
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その輸出した資産の価額が20万円以下の場合 |
郵便物を輸出した事実が記載された帳簿又は書類で一定の要件を満たしているもの |
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国際輸送、国際通信、国際郵便及び信書便 |
国際輸送等があった年月日等が記載された帳簿又は書類で一定の要件を満たしているもの |
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その他の資産の譲渡等のうち、上記に掲げる取引以外のもの |
その取引の相手方との契約書その他の書類で以下の事項が記載されているもの (1) 資産の譲渡等を行った事業者の名称と住所 (2) 資産の譲渡等を行った年月日 (3) 資産又は役務の内容 (4) 対価の額 (5) 相手方の名称と住所等 |
今回あは、輸出取引に係る消費税について、解説を行いました。特に、輸出に絡む消費税の還付手続きや、免税を受けるための条件については質問の多いところになりますので、もしご相談のある方は、お問い合わせフォームからお問い合わせを頂ければと思います。