インフルエンサーに対して支払う報酬に係る源泉徴収について

2023.05.21  [Sun]

大阪市都島区に事務所を構える、相続税・国際税務に強い村田綜合税務会計事務所です。
今回は、SNSへの投稿の際に依頼することの多い、インフルエンサーに支払う報酬に係る源泉徴収の必要性についてまとめたいと思います。

1. 概要 

個人でアパレル等の事業をされている方や、企業の中には、一定の影響力をもつ個人であるインフルエンサーに対して自社商品を無料提供等し、使用した感想等を“SNS投稿”で発信してもらう対価として報酬を支払うことがあると思います。
この場合、インフルエンサーに対して支払う報酬に対する源泉徴収は必要でしょうか。

2.  源泉徴収が必要な「報酬・料金等」

源泉徴収が必要となる「報酬・料金等」は、所得税において以下の通りとされています。

①  原稿料 、講演料、デザインに対する報酬など
② 弁護士、公認会計士等に支払う報酬・料金
③ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
④ プロ野球選手、外交員、 モデルなどに支払う報酬・料金
⑤ テレビやラジオ等の出演料等の報酬・料金
⑥ 芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
⑦ ホステス等に支払う報酬・料金
⑧  広告宣伝のための賞金
⑨ 馬主に支払う競馬の賞金
⑩ 役務提供を約することにより一時に支払う契約金

3.  インフルエンサーに対して支払う報酬は「報酬・料金等」に該当するか?

インフルエンサーに対して支払う報酬のうち、上記2にあてはまる可能性のあるものは、①原稿料、デザインに対する報酬もしくは④のモデルなどに支払う報酬・料金かと思います。その2つに該当するかどうかを以下の述べます。

①原稿料に該当するか?

源泉徴収の対象となる「原稿料」は、通常、執筆者から出版社等に寄稿された原稿への対価として支払われるもので、その原稿内容は、出版社等が書籍等として販売します。一方、インフルエンサーへの報酬は、インフルエンサーがSNSに投稿することへの対価であり、企業へ文章等を提出するものではありません。そのため、源泉徴収の対象となる「原稿料」には該当しません。

②デザインに対する報酬に該当するか?

インフルエンサーへの報酬は、その多くがSNSへの投稿に係る報酬と考えられるところ、中にはインフルエンサーに自社商品のPRとして新商品のデザインを依頼し、その対価として報酬を支払う場合もあると思います。その場合は「デザインに対する報酬」に該当し、源泉徴収の必要性が生じます。

③モデルなどに支払う報酬・料金に該当するか?

源泉徴収の対象となる「モデルに対する報酬」とは、雑誌、広告その他の 印刷物にその容姿を掲載させて受け取る報酬のことをいいます。この点、インフルエンサーの投稿を印刷することは稀かと思いますので、「モデルなどに支払う報酬・料金」にも該当しないことになります。

4. まとめ

上記で見た通り、インフルエンサーに対して支払う報酬は、その多くがSNSへの投稿に関するものであると思われるため、その場合は源泉徴収の必要はありません。但し、中には、インフルエンサーに商品のデザインを依頼し、デザインに係る報酬を支払うようなケースもあるかとは思います。その場合は、源泉徴収の必要が生じますので、留意が必要です。

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